NISA と米国株
NISA で米国株を持つと、税金はどうなるのか
結論から書きます。NISA 口座で米国株の配当を受け取っても、税金がまったくかからないわけではありません。 日本国内の 20.315% は非課税になりますが、米国で源泉徴収される 10% はそのまま残ります。 しかも、この 10% は取り戻せません。日本で非課税である以上「二重課税」に当たらず、外国税額控除の対象にならないからです。 一方、値上がり益(譲渡益)については NISA の非課税がそのまま効きます—— 米国は日本の居住者の譲渡益に課税しないため、もともと米国側の源泉徴収がないからです。
※ 本ページは制度と税率の一般的な整理であり、投資勧誘や投資助言ではありません。 個別の取扱いはご自身の状況によって異なります。実際の申告は税理士または所轄税務署にご確認ください (記載内容は 2026 年 8 月時点で確認したものです)。
まず枠の話(2024 年からの NISA)
金融庁に届出のある公募株式投資信託・ETF が対象です。米国の個別株は対象になりません。
上場株式や投資信託などが対象です。整理銘柄・監理銘柄、信託期間 20 年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託などは除かれます。
2 つの枠は併用できます。
生涯にわたる総枠です。このうち成長投資枠として使えるのは最大 1,200 万円まで(内数)。つみたて投資枠だけで 1,800 万円を使い切ることはできますが、成長投資枠だけで 1,800 万円にすることはできません。
非課税で保有できる期間は無期限で、口座を開設できる期間も恒久化されています。 保有している商品を売却した場合は、その商品の簿価(取得金額)の分だけ翌年以降に非課税保有限度額が復活し、また使えるようになります。 ただし復活するのは生涯の総枠のほうで、その年の年間投資枠(360 万円)は戻りません。 売った同じ年に枠を超えて買い直すことはできない、ということです。
配当:NISA でも 10% は残る
米国株の配当は、まず米国で源泉徴収され、その残りに日本の税金がかかるという 二段構えになっています。日米租税条約があるため、米国側の税率は法定の 30% ではなく10% に軽減されます(証券会社経由での W-8BEN の提出が前提です)。 日本側は上場株式等の配当として 20.315%(所得税 15% + 復興特別所得税〈所得税額の 2.1%〉= 15.315%、住民税 5%)です。
| 口座 | 米国側 | 日本側 | 配当にかかる合計 |
|---|---|---|---|
| 課税口座(外国税額控除なし) | 10% | 20.315% | 約 28.28% |
| 課税口座(外国税額控除を満額使えた場合) | 10% | 20.315% | 実質 20.315% まで下がりうる |
| NISA 口座 | 10% | 非課税 | 10%(取り戻せない) |
※ 約 28.28% は 1 −(1 − 0.10)×(1 − 0.20315)で計算した値です。 外国税額控除の控除限度額は「その年分の所得税額 ×(調整国外所得金額 ÷ 所得総額)」で決まるため、 誰でも満額使えるわけではありません。
つまり配当については、NISA の非課税メリットは「20.315% が丸ごと消える」ではなく「10% は残る」という形になります。 「NISA だから配当も完全に非課税」という理解のままだと、受取額が想定と合わなくなります。
なぜ NISA では外国税額控除が使えないのか
外国税額控除は同じ所得に日本と外国の両方で税金がかかっていることを前提に、 その重複を調整する仕組みです。NISA 口座の配当は日本側で課税されていないので、 そもそも調整すべき二重課税が存在しません。加えて外国税額控除は確定申告をして初めて適用されますが、 非課税所得は申告の対象にできません。制度の設計上そうなっている、という話です。
関連して知っておくとよいのが二重課税調整制度です。 2020 年 1 月 1 日以降、国内籍の投資信託や国内に上場している ETF・REIT・JDR の 分配金については、外国で課された税額を日本の源泉所得税から自動的に差し引く調整が入ります (投資家側の手続きは不要です)。 ただし米国に上場している ETF や米国の個別株はこの制度の対象外で、 外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。 同じ「米国株に投資する商品」でも、どこに上場している何を買うかで手続きが変わります。
もうひとつの注意点:損益通算ができない
NISA 口座で生じた譲渡損失は、特定口座や一般口座の譲渡益・配当等と損益通算できません。 繰越控除もできません。非課税である裏返しとして、損失も税務上は存在しない扱いになるためです。 利益が出たときの有利さと、損失が出たときの不利さがセットになっている、という理解が要ります。
米国の遺産税について(日本は条約がある)
米国法人の株式は米国所在財産として扱われるため、 日本の証券会社を通じて保有していても、米国の連邦遺産税の対象になりえます。 米国の非居住・非市民については米国所在財産が 60,000 ドル を超えると 申告(Form 706-NA)が必要になり、この金額はインフレ調整されません。
ただし日本は米国との間に相続税・贈与税に関する条約を持っています(1955 年発効。日本が締結している相続税・贈与税の条約はこれ 1 本だけです)。 この条約により、日本の居住者については統一税額控除を 「米国所在財産 ÷ 全世界財産」の割合で按分して適用でき、 実質的な非課税枠が 60,000 ドルより大きくなりうるとされています。 適用を受けるには申告書上での手続きが必要ですので、 該当しそうな場合は国際税務に詳しい税理士にご相談ください。
※ この点は台湾など条約のない国・地域と大きく異なります。海外の解説記事を読む際は、 その国が米国と相続税条約を持っているかどうかを確認してください。
数字を見るには
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